女性アスリート特有の問題点
近年、様々なスポーツにおいて女性アスリートの活躍が大きく取り上げられるようになりました。特に日本産婦人科医会は、2020年開催予定の東京オリンピックに向けて思春期女子アスリートに対するトレーニングが活発化するであろうとの予測を受け、女性アスリートの身体の状態や月経に関する状況について、産婦人科医から適切なアドバイスを受けやすい環境を作ることを啓発しています。
そこで今回は、女性アスリート特有の問題点として「無月経」について取り上げてみたいと思います。まず、女性の健康を考える場合、女性の生涯におけるライフステージを考える必要があります。
- 思春期:月経が始まり、生殖の準備が整えられる。
- 成熟期:妊娠や出産。
- 老年期:閉経し、それに伴いホルモンなどの身体的バランスの変化が生じる。
心理社会的な側面から考えると、恋愛、結婚、家庭、妊娠、出産、子育てなどストレス要因となりえる問題も多いように感じます。また近年では、女性の就労率が高くなってきたことで職場での関わりや、仕事と家庭のバランスを保つことを求められる人が多くなっているのではないでしょうか。
以上のことからも性差による問題点は数多く存在しており、リハビリにおいても女性の特徴を考慮したサポートが必要であると考えます。多くの健康的な女性において、個人差はありますが月経は毎月1度、1週間程度あり、健康状態、身体機能において重要な役割を果たします。しかし、運動を行う女性では激しいトレーニングによって「運動性無月経」を生じることがあります。運動性無月経は「運動によって生じる月経異常」と定義されています。
発現機転の3要因として、
- 精神的・身体的ストレス
- 体脂肪の減少
- ホルモン環境の変化
が挙げられており、互いに関与することで運動性無月経を惹起すると考えら れています。運動性無月経のうち、続発性を呈する場合は、
1. 慢性の低エストロゲン、低プロゲステロン状態
↓
2. 骨密度の増加を抑制、骨密度の減少
↓
3. 疲労骨折
このような流れが起こってしまう可能性が危惧され、実際に疲労骨折を発症した女性アスリートには高率で月経異常が認められるという報告もあるほどです。
つまり、運動性無月経があると骨密度の減少をきたし、いつものトレーニングでもオーバーユースとなりやすい身体環境となってしまい、疲労骨折のリスクがさらに高まる可能性があるということです。また、無月経が1年以上続くと第二度無月経へと重症化し、回復しにくくなり、若年性閉経や将来的な循環器系疾患のリスク増加、妊娠・分娩能力の低下が起こる可能性もあるといわれています。
これらの予防や対策としてはいずれも専門医を訪ねることが必要となり、 リハビリテーション関連 スタッフができることは少ないかもしれません。しかし、疲労骨折で整形外科を受診した場合や、その他の要因で受診した場合などに、普段の練習量・生活背景の聴取や、月経の状態を聴取し、練習量のコントロールや食事の管理、ストレス対処法などのアドバイスは必要だと考えます。
【引用・参考文献】
- 編集:ウィメンズヘルス理学療法研究会 「ウィメンズヘルス リハビリテーション」158-167 2014
- 得居 雅人:女子長距離ランナーの月経異常と発現要因 1999