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リハビリノート
NOTE

筋膜ってなに??

近年、テレビなどのメディアを通して『筋膜』という言葉をよく目にするようになりました。それに伴い、患者様から「筋膜とは何??」との質問を受けることがあります。そこで今回は、筋膜に着目してみました。

筋膜とは?

 Ida P.Rolf博士は、『筋膜は構造の器官であり、三次元空間で身体を正しく保つための器官である。』と述べています。筋膜とは、皮下組織から存在する白く薄い膜であり、英語のFasciaを筋膜と訳しているため誤解されがちですが、筋肉だけを包む膜ではなく、骨、内臓器官、血管、神経など身体のあらゆる構成要素を包みこみ、それぞれの場所に適正に位置するよう支えています。つまり、人体は、全身が筋膜という容れ物で中身を傷つけないように包まれているのです。また筋膜は、コラーゲン組織のため可塑性に富んでいます。つまり怪我や緊張など様々な内的・外的ストレスによって短縮や過緊張や他の筋膜と癒着して変形します。筋膜はよくベストに例えられ、ベストは引っ張るとストレスは様々な方向へ広範囲に伝わります。そしてそのストレスがベストの伸縮限界を超えるとベストは縒れてしまい、このような状態が人体の中でも起きていると考えられています。

筋膜治療の有用性

 ご存知の方も多いと思われますが、徒手療法の一手技である筋膜リリースは穏やかな圧力と弾性・膠原線維を意識した持続伸張により膜組織のねじれを元に戻し、可動性や伸張性の改善を目的としたテクニックです。その手技特性によりアライメントの改善や急性・慢性の疼痛軽減を始めとしてパフォーマンスの向上、退行変性の予防など幅広く用いることができます。筋膜リリースのゴールは筋膜制限を解除し身体平衡を元に戻して、影響を受けた領域に血流量を増やす血管運動神経の反応を引き出し(ヒステレーシス)、リンパドレナージを改善することで軟部組織固有感覚の感覚機構をリセットすることにあります。勝又らによると、ハムストリングスのスタティック・ストレッチ(以下、SS)と筋膜リリースの効果を比較すると筋膜リリースの効果は1日以上継続し、SSに比べ他動運動時の伸張性の改善あるいは疼痛閾値の上昇を期待できると報告されています。SSでは、ゴルジ腱器官の活性化は少なく顕著な反応は起こさないとされていることから、SSは筋組織の硬結を改善し伸張性を向上させることはできますが、ゴルジ腱器官を介した神経学的な対象筋の筋緊張低下を期待することはできません。それに対して筋膜リリースの穏やかな圧力と持続的伸張は筋にリラクセーション効果をもたらし、筋-腱移行部に存在するゴルジ腱器官にも伸張刺激を直接入れることでその働きを活性化させ狙った筋を抑制し、伸張しやすくすることができます。また臨床上よく経験する下腿浮腫が、筋膜リリースを行うことで筋膜を構成する支持組織の正常機能である代謝物質の交換・輸送の働きを改善することにより浮腫の改善が見られたという報告もあります。日々の臨床において、患者様のモチベーションを維持していくことは常に課題となりますが、筋膜リリースのように即時的な効果があることで心理的にも治療に対してのモチベーションが向上しやすく、積極的な治療への取り組み、自宅でのセルフエクササイズも継続的になり、治療の効果が向上する要因になると考えられます。

引用・参考文献

  1. 竹井仁 監訳:人体の張力ネットワーク 膜・筋膜 最新知見と治療アプローチ
  2. 勝又泰貴ら:筋膜リリースの効果-即時効果と持続効果に関する検討-  
  3. 福林秀幸ら:筋膜リリースによって下腿浮腫が改善した症例  (4) 板場英行、石井慎一郎 訳:アナトミー・トレイン 第2版
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